2024年10月31日
2025年4月13日に開幕する2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて、当社はさまざまな機運醸成活動を行っています。9月10日、当社千里丘オフィス近隣の市場池公園では、大阪・関西万博を機に当社の生物多様性保全施策として導入した、いきものコレクションアプリ「Biome」(バイオーム)でいきものを探す社内イベント「Nature Café」を開催しました。
当日は、当社が大阪・関西万博でゴールドパートナーとして協賛するシグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」の河森正治プロデューサーも参加。イベント終了後に当社サスティナビリティ企画部長の近藤彩子と、生物多様性保全や循環型社会の実現に向けた取り組みや考え、大阪・関西万博で実現したいことなどを語り合いました。
近藤:本日は暑い中「Nature Café」にご参加いただきありがとうございました。「Nature Café」は、生物多様性保全を社員が自分ごととして認識するためのイベントなのですが、取り組みを通じて、社内からは「生物多様性保全への関心が高まった」「営業現場で重要性を伝えていきたい」といった声が出ています。参加してみていかがでしたか。
河森:虫を見つけて撮影しようとしても、すぐに逃げられて……。改めて、いきもののデータを収集する難しさを実感しました。でも、それも含めて楽しかったです。
近藤:私もゲーム感覚でハマってしまい、イベントの50分間があっという間でした。河森さんはイベント冒頭のごあいさつで、「『Biomeアプリ』はゲーム感覚で撮るところから生物多様性保全への“行動”が始まっているのがすごい」とおっしゃっていましたよね。
河森:生物多様性保全の取り組みには多角的なアプローチがありますが、行動するには少し敷居が高いものが多いですよね。その点「Biomeアプリ」は、「いきものを探す」という行動なしには撮影できません。撮影したときには取り組みにすでに一歩を踏み出しており、写真を送った時点で、情報を提供しています。つまり、生物多様性保全への貢献になっている。この直結性が非常に良くできているなと感じています。
近藤:私たちが普段行っている意識調査でも、「生物多様性を保全しなければ」「命は大事」という意識を持っているという回答と比べると、実際に行動に移しているという回答は少ないです。そう考えると、行動はサスティナビリティーの重要なキーワードですね。
河森:何気なくでも「Biomeアプリ」を使ったら、「絶滅危惧種が数多くいる」などの事実が分かり、そこから次の興味や行動に結びつきますよね。だからこそ、まず一歩を後押しすることが大切なポイントなんです。
近藤:当社でも、サスティナビリティーへの行動を後押ししている事例があります。そのひとつが、ラベルレス飲料の販売です。捨てる際に分別の手間が少ないことが購入動機であっても、結果的に環境不可軽減に貢献しているんです。
河森:パビリオン「いのちをめぐる冒険」も、来場者が一歩を踏み出すきっかけになればいいなと考えています。コンセプトは、「いのちは合体・変形だ!」。つまり、自分が食べたものが自分と合体して、体内で変形して排泄物になりますが、もっと視点を広げてみると、魚を食べることは魚のいた海と合体し、日常では太陽とも合体している。私たちは常に合体と変形を繰り返しています。自給自足の時代には身近に全部見えていたのに、現代社会は水も食料も、行ったこともない国や土地からやってきます。でも、「いのちは合体・変形だ!」という視点を持つと、これは信頼できる水なのだろうか、捨てたものがどこで分解されてリサイクルされるのかなどとおもんぱかることができます。その実感が、生物多様性保全へと結びつくのではないかと思うのです。
近藤:確かにお魚やお肉をスーパーで見るけれど、そこに至るまでのプロセス、スタートとエンドは知らないことが多いですよね。私たちが販売するコカ・コーラ社製品も、どこの水を使って作られ、使われた水はどのようにして育まれているのか、使用済みの容器はどこへ行くのかなど、当社の取り組みを知っていただくことも重要だと考えています。
河森:コカ・コーラ ボトラーズジャパンの取り組みを知ってもらえれば、使用済み容器の扱い方も変わってくるかもしれませんね。
近藤:使用済み容器の観点で言えば、自動販売機の横にリサイクルボックスを置いていますが、中身が見えないから、缶やPETボトル以外のゴミやプラカップを入れられてしまうことがよくあります。
河森:透明にして見える化すれば、変わる可能性はありそうですね。
近藤:空容器の投入口を上からではなく下から入れるといった仕様変更もしてみたのですが、だったら横に置くというパターンもでてきています。パビリオンを訪問した後にリサイクルボックスを見た方が、「これは容器が生まれ変わるために必要な箱なんだ」「だから綺麗な状態で缶やPETボトルを投入しよう」という考えに変わり、異物混入率が減ったらうれしいです。
近藤:パビリオンの建物には、真水ではなく海水で練る新素材HPC(ハイブリッド・プレストレスト・コンクリート)を活用するとお聞きしました。
河森:真水を使わないで済むのは画期的だと思います。もちろん、コンクリートが今後建築素材として最適かという議論もあります。途上国は街づくりを考える上で、コンクリートの活用が必要なエリアもまだあると考えると、環境への負荷が軽減できたほうがいい。しかも、HPCは腐食されにくいので耐用年数が長く、一般的なコンクリートより軽量です。だから実装して、長期間実験できるのはいい試みですよね。終了後もリユースしたいと考えています。
近藤:新しいことに挑戦するのはリスクもあって大変だと思いますが、未来へつなげていくという意味でも大切ですよね。パビリオンでほかにも注目してほしいポイントはありますか。
河森:目玉は、超時空シアターです。宇宙スケールの食物連鎖をカメラ付きVRゴーグルで没入感と一体感を行き来する作品なのですが、訪れた方が「太陽までを含めた生態系を堅持していこう」という感覚になることを狙っています。
近藤:超時空シアター、とても楽しみです! 持続可能を私の主語で考えると、「自分の子どもにより良い自然環境を引き継いであげなければ」という責任感になります。今は気候変動も含めて課題だらけですから。また、企業の一員として考えると、収益を上げ続けるということもありますが、そのプロセスにおいては、生物多様性や環境も守っていかなければいけないと感じています。そういう意味では、私も含めて多くの社員がパビリオンにお邪魔して、環境問題を「自分ごと化」する機会に繋がればと考えています。
河森:今の社会を維持するには、そうやって視点を広げていかないと、いずれ破綻しますよね。ローテクの時代に持っていた本能を活性化して現代の知恵を結びつけると、より効果的じゃないかと思うことがあります。たとえば「Biomeアプリ」を使ったいきもの探しでも、観察力が上がるのではないでしょうか。
近藤:持続可能の大先輩と言ったら、たとえば虫ですもんね。
河森:彼らは人類の歴史より断然長く生きていますよね。万博会場では、そういったいきものの視点を凝縮体験として提案します。一方で、「Biomeアプリ」を使ったいきもの探しの共同プロジェクト(※)も、大阪・関西万博後も続けていきたいですね。さらに一歩踏み込んで、いきものの種類を知るだけでなく、「なぜそのいきものはそこにいるのか」と考えられるようになると、よりいきものの立場に立って物事を考えられるようになるのではないでしょうか。「風に乗りたくて飛んでいるのか」とか、「何を食べたくてここに来たんだろう」と想像することもできる。するとやがて、「いきもの同士の関係性」という発想に繋がり、生物多様性保全につながる行動が自然にできるのではと思います。
(※)シグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」の協賛パートナー3社が森林・緑地・海の各クエストオーナーとなり、『いきもの探しはデカルチャー!』と題した世界最大規模の生態系調査プロジェクト。コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、森のクエストを担い、2024年9月末時点で、911,491件のデータを収集しています。
https://shojikawamori.jp/expo2025/biome_quest/
近藤:発想は持続可能な社会を実現するうえで大切なポイントですよね。慣れ親しんだ社会に目を向けるのではなく、改めて自然に目を向ける。子どもと過ごしていると、大人になったからこその固定観念や、失ってしまった発想によく気づかされます。そういった感性を取り戻し、ビジネスに展開することで、持続可能な社会を深めるアイデアが生まれる気がします。
近藤:当社の製品に重要な要素は水です。ですから、持続可能な未来へのアプローチとして、水資源保全を推進しています。具体的には製品や製造工程に使用した水をどれだけ地域に還元できたかを表す「水源涵養率」を重要KPIとして設定し、工場周辺流域の地域のみなさまと連携しながら、森林保全など水資源保全活動を行うことで「製造に使用した水」以上の水を地下水として自然に還元しています。2023年の工場周辺流域での水源涵養率は400%を超えており、当社が製品で使用した水の4倍の量を地域の自然に戻すという大きな成果が得られています。
今回のパビリオンでも、ご来場者の方が有限な水という資源を再認識し、それを育むことに共感して会場を後にしていただけたらうれしいです。
河森:水はすべてのいきものにとって大切な存在ですよね。日本は水資源が豊かで気づきにくいところですが、その貴重さを伝えていきたいと私も考えています。
近藤:さらに日本のコカ・コーラシステムでは、ザ コカ・コーラ カンパニーが掲げるグローバル目標「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)」の達成のために、「設計」「回収」「パートナー」の3つの柱から構成される「容器の2030年ビジョン」を設定し、容器由来の廃棄物削減と日本国内におけるプラスチック資源の循環利用を促進しています。まだ道半ばではありますが、自治体、飲料業界、地域社会といったパートナーと協働し、より着実な容器回収・リサイクルスキームの構築に向けて、今後もたゆまぬ努力を続けていきます。
河森:継続することが重要ですよね。私も大阪・関西万博以後も、皆さんとの取り組みに関わっていきたいです。人間中心ではなくいきもの中心に発想できる社会になれば、これまでとは異なる未来がつくっていけると思います。これからも自分にできることを考え続けていこうと思います。
近藤:まずは、パビリオンへ多くの方に足を運んでいただき、生物多様性や生態系保全を「自分ごと」として理解を深めていただきたいですね。そうして環境意識が高まり、たとえば水を購入いただいた際も、「どこから来た水なのか」をなんとなく感じてもらうのが当たり前になってほしい。欲を言えば、その水が循環して帰っていくところまで、私たちがサポートをしていることを知っていただけたら……。「だからコカ・コーラ社製品を買うんだ」と選んでいただけるその日まで、私たちもがんばっていきます。