2025年1月6日
当社は2024年11月12日、育休をテーマとした社内イベント「Calin‘s Café」を開催しました。
「Calin’s Café」はカリン・ドラガン(代表取締役社長 最高経営責任者)が2019年の就任時にスタートさせたイベント。ミッション・ビジョン・バリューの実践を目的とし、多くの社員との対話の機会を持つために継続しています。今回は初めて、育休をテーマとして、直近で育休を取得した社員がカリンを囲み、育休を経験して得た気づきや自身の変化について語り合いました。
当社では2024年9月より、グループ社員のワークライフバランスを充実させ、特に男性社員の育児と仕事の両立を支援する一環として、3日間の配偶者/パートナー出産休暇(有給休暇)取得を義務化しています。イベントではこうした制度について触れながら、誰もが働きやすい職場の実現に向けた新たなアイデアも提案されました。本記事では、カリンと社員たちの対話の様子をお届けします。
カリン:私たちの素晴らしいカフェにようこそ! 当社ではこれまでにも、さまざまな形でCalin‘s Café を開催しており、ここ数年でよりポジティブな変化を感じています。たとえば、以前に「女性が働きやすい環境」について対話したある女性社員は、今ではママとなってこうしたイベントに参加してくれているのです。私たちはもっともっと進化できるはずです。
私自身も今年、息子が産まれ、育児のために休暇を取得しました。今日は私の生活の変化について話しつつ、同僚たちの声に耳を傾けたいと思っています。
代表取締役社長 最高経営責任者 カリン・ドラガン
眞田:本日の進行を務める眞田です。私自身も、今年、二人目が生まれたタイミングで2カ月間の育休を取得しました。今日は育休を取得したみなさんの体験談を聞きながら、誰もが働きやすい環境を作るための議論を深めたいと考えています。
当社は育休取得を推奨するためにさまざまな取り組みを行っています。男性社員がつけている「パパエプロン」もその一つ。男性社員の育児参加や育休取得を当たり前にするため、お子さんが誕生した社員へ、上司がオリジナルデザインのパパエプロンを進呈しています。岡部さんは、上司からパパエプロンを受け取ったときにどう感じましたか?
お子さんが誕生した社員へ進呈している「パパエプロン」と、スタイになるハンカチ
眞田皓一郎 人事・総務本部
岡部:「自分が父親になったんだ」という実感が湧いたのを覚えています。家では実際にこのエプロンをつけて、子どもの沐浴や家事をしています。
岡部拓也 SCM本部
カリン:私も、息子が誕生した際に人事本部長からパパエプロンをプレゼントしてもらいました。家事や育児をするタイミングでこのエプロンを着けると、良い切り替えになりますよね。
眞田:実際に育休を取ったことでライフスタイルや仕事への考え方にどんな変化がありましたか?
史:育休取得前は、育児と仕事のバランスがうまく取れるか、周囲に迷惑をかけないかと心配していました。でもその不安は職場復帰後に薄れていきましたね。上司や同僚のサポートによって、復帰後はすぐに元の業務に戻るのではなく、周囲のヘルプ業務から始めたんです。2カ月ほどそうした期間を過ごし、仕事への自信を取り戻していきました。家では毎日子どもの笑顔に癒やされ、仕事へのモチベーションは出産前よりもアップしています。
史清 フードサービスカンパニー
石黒:私も史さんと同じように、仕事に割ける時間が限られることを周囲に申し訳ないと思っていた時期もありました。そんな気持ちを上司に話したところ、「チームは持ちつ持たれつだよ」と言われたんです。今は育児に時間を取られるけど、子どもが大きくなればまたフルスロットルで仕事ができる。だから気にしなくていいのだと。その言葉をもらって、申し訳ないという気持ちがなくなりました。
石黒章子 調達本部
カリン:史さんも石黒さんも、本当に素晴らしいチームで仕事をしていますね。同僚に対して気を遣わなくてもいい空気を作ることで、育休から復帰する際に仕事に溶け込みやすくなるはず。多くのチームが参考にできる事例ではないでしょうか。
眞田:当社は育休取得推進のためにさまざまな取り組みを行っています。2024年9月には、育児における男性の積極的な関与を支援するために3日間の「配偶者出産休暇」取得を義務化しました。2025年には男性育休100%の実現を目指しています。さらに社員が育休を取得しやすくするために、みなさんは何が必要だと思いますか?
森部:まずは育休取得によって生じる不足人員を補充することが重要だと思います。私自身、間を空けながら3〜4カ月の育休を取得しました。その際には上司の配慮で私の代わりを務めてくれる人材をアサインしてもらい、安心して育休期間を過ごすことができました。
また、育休取得者が「会社携帯を持たない」ことをルール化するのも大切では。チームのメンバーがうまく連携し、休暇中のお客さま対応が必要にならないようにすると良いと思います。
森部雄暉 リテールカンパニー
カリン:私たちはデジタル化を進め、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言前には全員にiPhoneを支給する体制を整えました。その目的は「常につながっていること」でした。コロナ禍ではこの体制が大いに役立ったと思います。ただ、森部さんが指摘するように、このツールが負担になってはいけませんね。ツールはあくまでもビジネスを推進するための道具。育休取得中には手放すべきだと思います。
草間:育休取得時に「周囲に申し訳ない」という気持ちを持つのはやむを得ないことなのかもしれません。責任感が強い人ほどそうなりますよね。育休取得者本人だけでなく、サポートする周囲のメンバーを支える制度や仕組みがあってもいいのではないかと思っています。
また、私は出産前から1年ほど不妊治療をしていて、産休に入る前の段階から働き方の調整が必要でした。出産前からフレキシブルな働き方に対応できる制度が必要だと感じています。
草間梢子 経営戦略本部
カリン:周囲のメンバーに任せて頼るだけでなく、システムとして育休取得者を支える仕組みを作るべきですね。また、不妊治療に関する重要な指摘もありました。不妊治療の大変さは私もよく理解しています。子どもを授かる前のサポートについて、何が求められるのかを知っている人たちに関わってもらい、新たな制度や仕組みを作っていきたいですね。
眞田:ここからは、みなさんの質問にカリンさんが答えます。
石黒:育児のために休暇を取得したことについて、カリンさんが感じた「デメリット」をあえて聞いてみたいです。これから育休を取る人は、事前にどんな対策をしておくと良いと思いますか?
カリン:育児のために休暇を取っていた期間は、物理的なビジネスの場に出ていくことができず、コロナ禍の時期に近い感覚がありました。ビジネスから少し距離を置き、育児によって考え方を変えることができたのは良い点でしたが、時間が経つにつれて、仕事の仲間とのつながりやビジネスの動きから置いてけぼりにされている気分にもなりましたね。
思いきり仕事ができないことに対するストレスもありました。その意味では、リモートワークですぐに成果を出せるよう準備しておくことが重要だと思います。大事なのは仕事の結果を出すことであり、どこで仕事をしているかは問題ではありませんから。
岡部:ちなみにカリンさんは今、育児でどんなことを担当していますか?
カリン:できることは何でもやっていますよ。私はとにかく、パートナーの産後はすぐに育児のために休暇取ることが大事だと思っていたんです。産後のパートナーと一緒に過ごすことで新たな絆が生まれ、育児への理解が深まります。だから私はパートナーに「二人で平等に育児をやりたい」と言いました。パートナーが遅くまで仕事をしているときにはワンオペで対応することもあります。
ただ、寝かしつけだけは難しくて……。家にはベビーベッドがあるのですが、パートナーが帰ってこないと寝ないので、なかなかベビーベッドに移せません。
岡部:うちも、パートナーだとすぐに寝るのに私だとなかなか寝てくれないんです。このような悩みってよくあるものなのでしょうか。
石黒:そういう場合は、お母さんの匂いを感じると安心して寝られるようですよ。私の場合は、仕事で遅くなるときには自分のパジャマをパートナーに渡して、寝かしつけの際に使ってもらっています。
カリン:とても良いアドバイスですね! 早速やってみます。
草間:私は育休から復帰した後、先輩の女性管理職をロールモデルにして育児と仕事の両立を頑張ってきました。カリンさんは経営者として、どんなロールモデルを社員に示せると思いますか?
カリン:私自身は、育児のための休暇取得を経験して以前よりも仕事の効率性が高まり、より重要度の高い業務にフォーカスするようになったと感じています。たとえば会議についても重要度で分別し、オンラインで対応できるものはオンラインで参加。パートナーが仕事をしているときは、私はできるだけ家にいて、育児に向き合えるようにしています。
草間:育児のために休暇を取得することを迷っている人には「社長ができたんだからできないわけがない!」と背中を押してあげたいですね。
眞田:昔ながらの考え方だと、仕事の優先順位が高かったり、長期休暇を嫌ったりする傾向があると思います。こうした日本社会の空気と、どう向き合っていけばいいでしょうか。
カリン:私は十数年にわたって日本で働き、少しずつ日本の文化を理解できるようになってきました。日本を世界3位の経済大国に押し上げた一因には、昔ながらのがむしゃらに働くワークスタイルがあったと思います。
これがすべて間違っているとは言えませんが、日本ではこのがむしゃらさが極端になり、不健全なところまで進んでしまったのかもしれませんね。ときには仕事を優先することがあってもいいと思いますが、家族を犠牲にしてはいけません。私の出身国であるルーマニアでは、何を置いても家族が最優先です。
大丈夫、誰かが育休を取ったからといって会社が倒産するわけではありません。だから社員には「安心してじっくり育児と向き合ってほしい」と伝えたいですね。
眞田:社内では、育休取得について悩んでいる人がまだまだ多いのも事実だと思います。人事と広報で連携し、さらにサポートしていきたいと思います。
カリン:今後は、子どもたちが職場に来られる機会を作ってもいいかもしれませんね。子どもを職場に連れてくるということは、私たちの実際の生活を職場のメンバー同士で理解する良い機会となります。子どもにとっても、親が仕事をしている姿を見ることは貴重な経験となるでしょう。私もいずれ、息子をオフィスに連れてきたいと思っていますよ。