2024年12月20日
当社では、お客さまへ安定して製品をお届けするための「S&OIプロセス」に取り組んでいます。
「S&OI」とは、企業における「販売および業務計画」を意味するS&OP(Sales and Operations Planning)の取り組みをさらに進化させた、当社独自の取り組みのこと。SCM(サプライチェーンマネジメント)部門や財務部門、営業部門などが全社横断で協働し、強固な基盤を構築した結果、需要最盛期となる夏季も安定した製造・販売を実現できました。
この記事では、当社が推進するS&OIプロセスの概要や、お客さまへ安定的に製品をお届けするための取り組みについてご紹介します。
当社では「S&OI(Sales & Operations Integration)」を「透明で整合性のある一連の数値をもとに財務の可視性を高め、戦略的および戦術的な意思決定を行うプロセス」と定義しています。
以前は当社においてもS&OP会議を行いながら、関係部門が連携して需要と供給のバランスを調整していました。しかし需要最盛期を中心に、欠品や過剰在庫、輸送コスト増加などの問題が顕在化。そこで従来のS&OPを見直し、2022年4月よりS&OIプロセスがスタートしました。
これらの問題の背景には、業界を取り巻く状況が日々変化していることが挙げられます。
近年、地球温暖化に起因する異常気象が頻発し、日本の夏は毎年「過去最高の暑さ」を更新しています。当社の需要最盛期である夏に向けては、気象庁が発表する長期予報などを踏まえ、猛暑・酷暑を前提として需要急拡大に備えなければいけません。
また、「物流の2024年問題」に対応し、計画的かつ柔軟な輸送体制を構築することが急務に。倉庫における滞留在庫の予防・削減を通じた倉庫キャパシティの拡大を実現することも求められていました。
しかし、従来のプロセスでは、需要予測は属人的かつ短期間の更新に留まり、供給計画は将来に向けた可視性やコントロール力が低下していました。その結果、予測のブレによって対応が遅れ、各部門は短期的なリカバリーに追われることとなり、生産性悪化やコスト増加につながってしまっていたのです。
生産性向上と理想的なコスト管理体制の構築を成し遂げられたS&OIプロセス。その具体的な取り組みや成果をご紹介します。
① 需要変動を想定した複数のシナリオを作成し、柔軟な意思決定を実現
需要最盛期である夏場の安定供給実現のために、複数のシナリオを作成し、供給体制の事前シミュレーションを行いました。複数のシナリオに対し、さらに財務部門がコスト面での全体最適についてもシミュレーションを示すことで、プランニングの精度を高めるとともに、不測の事態の際にも意思決定のスピードを早めることを可能としました。
② S&OIを基盤とし、関連するプロジェクトとの協働により、強固な製造・物流・販売体制を構築
SCM部門は製造効率だけを考えるのではなく、その先の販売や全体最適までを見据えた製造体制を構築。多品種・小ロット生産を行うことで、長距離輸送を削減する「地産地消モデル」を推進し、エリア間をまたぐ輸送便数や経由拠点数の削減を進めています。
営業部門においても、お得意さまへ早めの納品を推奨することにより、ピーク時の急激な輸送量増加をあらかじめ分散することができるようになりました。その結果、輸送を取り巻く外部環境がますます厳しくなる中でも、輸送能力を最大限活用することができました。
③ 在庫削減と安定供給の両立
S&OI プロセスがスタートして以降、需要予測に対する取り組みや意識がさらに高まり、需要予測精度が向上していります。その結果、最盛期の総在庫を削減することを可能とし、滞留在庫をできる限り発生させず、早期に消化することで、在庫削減と安定供給の両立を実現しました。
④ 社員の理解を深めるプログラムの実施
関係者が理解を深めるためのS&OI ワークショップやS&OI トレーニングを実施するとともに、S&OIが組織文化として定着するよう、全従業員対象のE-learningなどを実施しています。
プログラムを通じプロセスの変化を自分ごととして捉え、自分はどこに貢献できるかという意識を醸成しています。
S&OIプロセスがスタートして2年目となる2023年の需要最盛期では、部門を超えた強固な連携のもとで安定供給を実現することができました。2022年と2023年の比較実績では、ケースあたりの輸送距離平均17%削減、タッチ数6%削減、輸送数量は9%削減を実現。対して、売り上げは前年比3%増と伸長しており、輸送数量は増えているにも関わらず、物流コストの削減&最適化を達成しました。
何よりも、大きな生産トラブルや生産遅延もなく、安定的なオペレーションを実現し、高水準のカスタマーサービスを維持できたことが何よりの成果だったと考えています。この経験を生かし、2024年の最盛期にはさらに高いレベルのS&OIに取り組みました。
S&OIプロセスにはさらなる可能性が眠っています。短期・中期だけでなく、より長期の計画をカバーすることで、将来のインフラ計画など、効率を意識した投資判断に貢献できると考えています。またデジタル化をさらに推進することで、これまで以上に生産性を向上させていけるはずです。
今後もお客さまに安定的に製品をお届けし、ハッピーなひとときを実現していくために、当社はこれからもS&OIプロセスを進化させていきたいと考えています。