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普通のリサイクルとは何が違う? ペットボトル資源を最大限に活用する水平リサイクル「ボトルtoボトル」とは

2024年5月16日

大切な資源を持続可能な形で有効活用していくため、当社は、サスティナブル素材(※)を2025年までにすべての製品に使用、そして、2030年までにその使用率を100%にすることを目指しています。[1]
※サスティナブル素材:「ボトルtoボトル」によるリサイクルPET素材と、植物由来PET素材の合計

その実現に向けて進めているのが、使用済みペットボトルを再びペットボトルとして使えるようにする「ボトルtoボトル」(水平リサイクル)の取り組みです。使用済みのペットボトルを資源として繰り返し活用できるようにするためには、この水平リサイクルが欠かせません。

今回の記事では、全国の自治体や企業と協業して使用済みペットボトルを回収するための仕組み作りを進めている中村綾乃と山田明季にインタビュー。当社が取り組む「ボトルtoボトル」の現在地を紹介します。

資源循環の効率性を最大限に高める「水平リサイクル」とは

一口に「ペットボトルのリサイクル」といっても、方法はさまざま。

使用済みのペットボトルは、食品トレーやフィルムシート、衣類など多様な用途にリサイクルでき、こうした製品にリサイクルされることを「カスケードリサイクル」と呼ばれています。それに対し、元の製品と同様の品質を保って再び活用できるようにするのが「水平リサイクル」で、ペットボトルの場合、「ボトルtoボトル」と呼ばれています。

中村は「リサイクル前と後で用途を変えない資源循環の方法として水平リサイクルが注目されている」と話します。

「ペットボトルをカスケードリサイクルする場合は、利用者の意識やリサイクルしやすさにもよりますが、その後の製品が最終的に廃棄されることも多く、1回のリサイクルで終わってしまうことがほとんど。対して水平リサイクルの場合は繰り返しペットボトルとしてリサイクルできます」(中村)

ペットボトルリサイクル推進協議会の調べによると、日本におけるペットボトルのリサイクル率は86.9%となっています。この数字だけを見ればペットボトルのリサイクルは効率的に進んでいるように感じますが、山田は「水平リサイクルの比率はまだまだ低い」と指摘します。

「海外ではリサイクル率が30〜40%に留まっている国も多く、86.9%という数字だけ見ると、日本はペットボトルの回収率もリサイクル率も高いと言えます。ただ、水平リサイクルに限定すると約30%と、まだまだ進んでいるとは言えません。資源循環の効率性を最大限に高めていくためには、ボトルtoボトルの取り組みをさらに推進していかなければならないと考えています」(山田)

回収されたペットボトルが再びペットボトルになるまで

「ボトルtoボトル」はどのようにして進められているのでしょうか。

ペットボトルを水平リサイクルする手法としては、原料を熱分解で溶かして異物を取り除く「マテリアルリサイクル」と、原料を分子レベルまで分解して異物を取り除く「ケミカルリサイクル」があります。現在、当社で進める「ボトルtoボトル」の主な手法は、CO2排出量を抑えることを第一としてマテリアルリサイクルです。

「ペットボトルは飲料に使うものなので、できる限りきれいな状態で回収しなければなりません。ごみなどの異物が混入することで製造工程に問題が起きることもあるので、『洗ってそのまま使う』というわけにはいかないんです」(中村)

具体的な「ボトルtoボトル」の流れを追いかけてみましょう。

各家庭から自治体が指定する集積所に出されたペットボトルは、まず収集業者によって中間処理施設へ運ばれます。そこでベール化と呼ばれる圧縮作業を行い、輸送効率を高めてリサイクル工場へ。

その後は細かなフレーク状にしてアルカリ水洗浄を施します。

8ミリ角のフレーク状に裁断し、水で洗浄した状態

フレーク状に裁断した後、異物を取り除き、高温減圧(高温で溶かす)で処理することで、「レジン」と呼ばれる再生ペット樹脂となります。

フレーク状のペットボトルを高温で溶かし、レジンとして結晶化した状態

このレジンをもとに成形した「プリフォーム」を当社工場でふくらませ、再びペットボトルとして再生します。

レジンを元に形成したプリフォーム。ここに高圧の空気を吹き入れることで再びペットボトルになる

「一からペットボトルを作る場合は、レジンの原料である原油を海外から日本に運んだり、レジンを作ったりする工程でCO2が排出されます。再生ペット樹脂を使う場合はこれらの工程が不要になることが大きなメリット。現時点での主なリサイクル手法であるマテリアルリサイクルによる再生ペット樹脂のみを使用した『100%リサイクルペットボトル』では、新規に石油由来原料を使用して製造したペットボトルと比較して、1本あたりのCO2排出量を約60%削減(※)します」(山田)

※原料採掘からプリフォーム(ペットボトルの原型となる中間製品)製造の工程までにおける削減率(日本コカ・コーラ調べ)

33自治体と連携。消費者の意識の高まりにも期待

「ボトルtoボトル」を推進していくためには、できる限りきれいな状態で使用済みペットボトルを回収する必要があります。そのため山田は全国各地の自治体へアプローチを続けています。

2024年4月現在、当社では33自治体[2] [3] [4]と連携しています。

「家庭から回収されるペットボトルは洗浄されているものが多く、質の高い空容器として回収できます。自治体側でも『循環型社会形成を推進する』という方針を掲げていることが多く、「ボトルtoボトル」は比較的進めやすい取り組みとしてご理解いただけることが多いですね」(山田)

生活者視点では、ここ最近「自治体のペットボトル回収ルールが以前よりも厳しくなった」と感じている人も多いかもしれません。これは当社をはじめとした飲料メーカー各社が水平リサイクルの取り組みを強力に進めている表れだといいます。

「飲み残しがあったり、タバコの吸い殻が入ったりして汚れているペットボトルは水平リサイクルが難しくなってしまいます。また、1本のペットボトルの汚れが他のペットボトルに広がってしまい、せっかく回収したペットボトルが水平リサイクルに活用できなくなることもあります。

消費者のみなさまにはぜひ、自治体のルールに従ってきれいな状態でペットボトルを出していただければと思っています。『キャップとラベルを外して1回すすぐ』だけでもきれいな状態になり、ひいては資源循環につながります」(山田)

水平リサイクルで再びペットボトルへ。緑のラインが「100%リサイクルペットボトル」の目印

企業・団体にとって大きな意義のある「ボトルtoボトル」の協業

当社では、「ボトルtoボトル」を推進するために企業・団体との協業も広範囲に取り組んでいます。担当する中村は「ペットボトルを資源として正しく回収すること自体にも大きな意義がある」と話します。

たとえば大規模オフィスビルを管理する不動産企業とは、オフィス内の共有部分から回収した使用済みペットボトルを当社製品としてリサイクルする「ボトルtoボトル」で協業。[5]オフィス内の自動販売機で製品を購入する際に見ていただけるよう、掲示物などで分別回収を促す啓発活動も行っています。

大手ドラッグストアチェーンとは、店頭にペットボトル回収ボックスを設置し、来店客から回収させていただく取り組みも。[6] [7]来店客からは「自治体の収集日以外でも、普段の買い物ついでにまとめてペットボトルを出せるのがありがたい」という声をいただいています。

ペットボトルを入れると中でつぶして減容する自動回収機を活用し店頭でのペットボトル資源回収を行う取り組みも実施中(当社オフィスの来客スペースにも設置しています)

さらに近年ではJリーグ(J1)のサンフレッチェ広島[8]、鈴鹿サーキット[9]・埼玉スタジアム2〇〇2[10]、さいたまマラソン[11]など、プロスポーツチームや大規模スポーツ会場・イベントとの連携も加速。試合開催日やイベント開催日などに来場した方々からペットボトルを回収するとともに、ポスター掲示などによって「ボトルtoボトル」の取り組みを周知しています。

会場では7秒以内にペットボトル本体とキャップ、ラベルを分別する「7秒チャレンジ」というゲームも展開。面倒に思いがちな分別作業も実は簡単だと実感し、分別の重要性を知っていただく取り組みで、会場を訪れたお子さんにも大人気です。

中村は「こうした協業は当社だけでなく、企業・団体にとっても大きな意義がある」と語ります。

「企業にはCO2をはじめとした温室効果ガスの削減に向けた『GHG(Greenhouse Gas)排出量削減』の取り組みが求められており、さらに企業によっては排出量の公表も義務づけられています。ペットボトルの水平リサイクルはGHG排出量削減につながる施策の一つ。GHG排出量削減につながる施策の一つとして、ペットボトルの水平リサイクルを引き続き推進していきます」(中村)


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